150 中央フリーウエイ/フラッシュバック【楽ガンぶろぐ】

150 中央フリーウエイ/フラッシュバック

・ 「あ、あー!」
・ 妻の叫び声にもかかわらず、愛車は観光バスの脇をすり抜けて加速する。
・ おおげさに騒ぐでない。
・ あの観光バスは走行車線を進むと読んだからこそ、あたしは自信を持って追い越し車線を進み、安全な位置取りをしたのだ。
・ なんの問題もない!

・ 「あんたの運転は乱暴なのよ。ジェット・コースターに乗ってるみたいでリラックスできないのよ。早くパーキングエリアに入って! わたしが運転するわ」

・ あたしゃ、ぶつぶつ言う彼女を無視した。
(あんたに運転させたら、家に着くのが明日になる。)
・ 下り坂のS字カーブにさしかかり、車は時速130キロ近くで疾走する。
・ ここでスピードを落とすわけにはいかない。
・ あたしゃ運転に集中した。
・ 下から浮き上がるような横からのGを感じて、全身から汗が噴き出す。
・ ハンドルを握る手が汗で滑る。
(これは危険だな。)
・ あたしゃ冷静に、後方の車に車線を譲った。
(血圧によくないかも・・・。)
・ 肩で大きく深呼吸する。
・ 目がチリチリして、追い越していく車のテールランプがにじんで見えた。
(疲れているな。)
談合坂サービスエリアまであと10分。
・ 次のサービスエリアで休憩すればいい。

・ 「あ、危ない! ぶつかる!」
(大丈夫だよ。)
・ あたしゃ余裕を持ったハンドルさばきで前の車をかわして、追い越し車線に入った。
・ 「追い越しただけだよ。そんなに騒がないで・・・。」
・ チラリと妻を見ると、腕組みしている。
・ 「胃が痛い。もう絶対に車で旅行しない」
・ !
・ ま、まずい! やってしまった!

・ 愛車は、まん丸になった彼女と汗まみれのあたしを乗せて静かにサービスエリアに進入した。